スマイルリンクさっぽろへ
2023年2月3日(金)~12日(日)までの期間限定で開設されていた『スマイルリンクさっぽろ』へ行ってきました。3年ぶりの本格開催となった『さっぽろ雪まつり』の期間(2月4日~11日まで)とほぼリンクする日程で、雪まつり会場からも歩いて行ける『札幌市北3条広場(アカプラ)』にスケートリンクが登場!のニュースに、ちょっと興味がわいたのがきっかけでした。
スキー派でした。
とはいえ、生まれも育ちも札幌。父はスキーのインストラクターの有資格者という家庭に育ったわたしは、物心のつく前からプラスチックのスキーは履かされていましたが、スケートはまったくの門外漢。スケート靴を履くのはおろか、至近距離で見たことさえありませんでした。
フィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーの試合などは、テレビをつけたときにたまたま映っていたら見るくらいで、特別興味があるわけでもないわけでもない。好きとか嫌いとかタグ付けできるほど知らない、というのが正直なところでした。
かといって、スキージャンプやアルペンスキーも、テレビに映っていたら見る、他に興味のある番組があればすぐにチャンネルを変える、くらいのスタンス。歩くのを覚えてまもなくスキーを履かされたわたしにとって、スキーは特別なものではなく、靴を履いて歩くのと大差ないくらいの履物のひとつでした。
一方、釧路出身釧路育ちの夫は、小さなころからアイスホッケーをやっていた人。夫は逆に、スケートはできる、スキーはできない、わたしとは真反対の人。お互いに慣れ親しんだウインタースポーツが違うこと、それ以前に、夫もわたしも、すでに数十年もの間、ウインタースポーツ自体をしなくなっていたこともあり、スキーやスケートに行くという選択肢がわが家で浮上することはありませんでした。
スキーから遠ざかった理由、戻らない言い訳
20代前半までは家族や友達とスキーに行っていましたが、当時『カービングスキー』なるものが出てきて、一度友だちのカービングスキーを履かせてもらったことがあり、その短さ、軽さと、嘘みたいに簡単に曲がれる衝撃で、長いスキーを取りまわす今までのスキーとの違いに愕然!結果、そこからスキーに行くことはなくなりました。当時、腕を上にいっぱいに伸ばしてやっと先端に届くかどうか…という長いスキーに乗っていたわたしは、その長くて重いスキーを担いで、ストックも持って、ゴーグルもして、これまた重いスキーブーツを履いて、駐車場からゲレンデまで歩いて登っていくことに急に醒めてしまったような気がしたのでした。
スキーは外でするのが普通で、だからこそ、天候や気温にも大きく左右されます。山の天気は変わりやすく、急に風が出てきて猛吹雪になったりなんてこともザラ。家からスキー場までも結構距離があり、往復時間だけで2~3時間かかるなんてことも当たり前。駐車料金にリフト・ゴンドラ代、昼食代と合わせていくと、1人1日1万円くらいはみておく必要がある。帰ったら帰ったで、ウエアからスキーから靴から…革手袋などなど、その日使った、身につけていたものすべてをその日のうちにケアしないといけない。疲労困憊状態で片づけるのが何より堪えます。
要するに、いろいろな意味でコストがかかるのです。
スキーに行くときのデメリットばかりを上げつらってしまいましたが、基本的にスキーは嫌いではないです。かといって好きかというと…。すべてお膳立てしてくれて片づけてくれるのなら喜んで!という感じでしょうか。もちろんそんなことをしてくれる人はいませんし、そこまでしてもらってするくらいなら、しなくていいかなという感じです。わたしにとってスキーは、好きとか得意とかいう類のものではなく、多分今も乗れるだろうなぁというくらい、身近にあったものでした。晴れた日の新雪のパウダースノーなんて最高過ぎます。思い出すだけでも本当に清々しくて気持ちがいい。でも今は、スキーに関連する道具を何も持っていません。やるとなると、レンタルか、少しは揃えるか、ということになります。必要なものが多いだけに、じゃあこれから行くか!とはなかなかなりません(笑)。
父もいまだに現役で滑っていますし、妹も、小学生の男の子の母親なので、スキー学習もあるため、つき合って滑っています。お正月に会ったときに「カービングスキーなんて簡単よ(笑)。」と妹が言っていました。妹には「貸してあげるよ」、父には「スキーやるなら全部やってやるよ。連れてってやるし、スケートできる人はすぐできるよ」とまで言われて、その気になれば、借りることも、行くこともできますが、踏ん切りがつかないのは、それぞれに忙しいみんなの予定をなんとか合わせても、当日のお天気がどうなるかわからないところが大きいかもしれません。その日吹雪いていたら、その日風が強く寒かったら…。スキーはほぼ初心者の夫も交えて、四半世紀ぶりのスキーをするのはなかなかハードルが高いです。
でも、お正月に実家にみんなで集まってそんな会話をしたことで、「スキーする?スケート行く?」という選択肢がわたしの中に芽生えました。そのタイミングでたまたま目にしたのが『スマイルリンクさっぽろ』のニュースでした。
まったくの予定外、急に行くことに。
土曜日、午前中仕事に行っていた夫がお昼頃帰ってきました。何をするでもない様子で、でも着替えるでもなく、手持ち無沙汰にしている夫に「何するの?」と聞くわたしに「何しようね」と返す夫。何気なく「スマイルリンクさっぽろはじまってるよ」と口にしたところ「行く?」と。自分からふっておきながら「えー?」とこたえるわたし。でも、リンクを見てみたい気持ちはあったので結局行くことに。
チケットの取り方などもそこから調べて、ローチケで予約して、わたわたと用意して出発。スタートの時間にちょうどいい頃合いに着いたはずでしたが、すでにそこは大行列。「これからの回も、その次の回もいっぱいで、夜の回ならまだ…」と係の方から伺って、驚きつつも一度その場を離れました。
何しろ待ち時間が長い(週末)。
大丸を見てまわったり、ステラプレイスでごはんを食べたりした後、受付のある赤レンガテラスに戻りました。「夜の回が始まる1時間くらい前には来ていた方が…」というお話を伺っていたので、それに合わせて行きましたが、すでにまた大行列。「夜の回がスタートしても感染対策で入場を制限しているので、順次のご案内になります。それでもよろしければ…」ということで、すぐには入れないのだなぁと思いながらも、今さら何もせず帰るという選択肢もなく、おとなしく並びます。
何しろスケート靴を間近で見たこともないような超初心者のわたしにとって、スケート靴を履いたところで立てるのかどうかさえわからない。さんざん待った挙句、立てず、当然すべれず…で終わるかもしれないと思いながらのトータル2時間近い待ち時間はなかなかにハードなものでした。トータルというのは、スマイルリンクさっぽろのチケットを受付に見せて「貸し靴を貸してください」と言って手続きをするまでの赤レンガテラス1Fフロアでの待ち時間と、そこから外に出て、リンクの定員や混雑状況を見計らって、入れる人数の指示があってから初めて貸し靴を引き換えられる、屋外での待ち時間の2段階があったからです。中での待ち時間の方が長かったのはまだ救いでしたが、それにしても、こんなに待たないとできないとは思ってもいませんでした。行ったのが土曜日だったので、平日はそこまで混雑することもないと思いますが、チケット制なら、時間単位のチケットにするとか、何か改善をしていただけるとありがたいなと思いました。
いよいよ、人生初スケート
貸し靴を借りて、靴を履き替える控室で、初めてスケート靴を履きます。控室にはベンチが沢山あって、じっくり座って履くことができます。夫はアイスホッケーをやっていた人なので、スケート靴の履き方のアドバイスもしてくれます。「靴ひもを全部緩めて、足を入れたらかかとをトントンとして合わせてから、下から順番に締めて。足首はしっかり締めて。上の方まで順番にひもをかけて、結んだあとのひもは短くなるように。」と。初心者は足首がグラグラするから、足首はしっかり締めた方がいいとのことでした。逆に、それ以外のところは締めすぎない方がいいみたい。ひもを結び終えたら、その場で立ってみてと言われて、立てるかな?と思いましたが、案外立てました(笑)。その場で足踏みをしてみて、痛いところがないか確認し、スケート靴で立つ、歩く感覚に慣れるところから。履いていたブーツを棚に置いて、いよいよリンクへ。夫が先に降りて、続いてわたしも。
氷の上なので当たり前なのですが、すべるんです(笑)。スケート靴も今さっき初めて履いたばかりで、初めて氷の上に立つ。後ろからも人が来るので、よけるために動かなければならない。もう歩くの?という感じですが、入口の前から動かないという選択肢はありません(笑)。夫に手を引いてもらって、とりあえずすみっこに移動。「どう?」と聞かれても、「う、うん…」という感じ。夫と一緒に、向こう側の壁まで行ったところでひと休み。その間に何回もバランスを崩し、つっかかり…を繰り返しながらも、ようやく到達した壁でわたしはひと休み。夫には「行ってきて」と言って、すべりに行ってもらいました。
後から調べたところ、『スマイルリンクさっぽろ』は、縦28m×横12.5m。その縦28m弱が、わたしの初すべりでした。一周して帰ってきた夫は「氷が硬い」と。夜の回だったので、気温が下がって氷も硬くなっていたのかもしれません。わたしは硬いも何もわかりませんが、とりあえず必死でまた向こう側のすみっこへ。少しずつ少しずつ移動(笑)。それを何度か繰り返すうちに、だんだんと氷の上を歩く~すべるということがわかってきたような気がしました。もちろん、すべっている間は夫の手は放しません。夫にとってわたしは要介護者。ぐらぐらバランスを崩しまくっているのがわかっているので、無理はさせません。
親子連れ、カップル、海外からの観光客の方もいらっしゃいます。さすが雪まつり期間。輝くイルミネーションに、こういう混雑、人がたくさんいる感じ、ひさびさだなぁと思いました。すべっている間は余裕がなさ過ぎて下しか見ていないのですが、ひと休みの度に目に入る氷と光の輝きの美しさは、コロナ禍以前ぶりのように思いました。初めてのスケートなので、とりあえず立てて、なんとか歩く~すべるところまでいけただけで御の字。目に映る光のまばゆさや人々の歓声がまたうれしくて、来てよかったなと思いました。
何周すべった(歩いた)でしょうか、だんだんと氷がザラザラガタガタしてきて、不意に変なところで引っかかるようになってきました。そして、ついに転倒!何が起こったのかもわからず、気づいたら身体が宙に浮いて、おしりから着地。おしりが痛い(笑)。立ち上がるにもスケート靴がすべるので、夫の手を借りて。
だんだんと氷が削れて、氷の上に硬い雪が積もったような状態になり、係の方が竹ぼうきで掃いてくださるのですが、削れるスピードの方が早く、初心者には引っかかってすべりにくくなってきたのでした。上手な方にはさもないことでも、今日が人生初スケート!のわたしにはそろそろ潮時かな…と思い、約1時間ほどで人生初スケートを終えました。
スケート靴を脱いで思い出したのは、スキー靴を脱いだ後の感覚。ギプスでもはめられていたかのような、まだ脱いでいないようなあの感覚。ひさびさだわぁとしみじみ。夫曰く「とてもいい靴」らしく、初心者にはとても優しい靴だったようです。夫も約30年振りのスケートで、氷の硬さや、リンクの狭さや人の多さ、わたしという超お荷物がいたことで思うようにすべれなかったらしく、「明日近くのスケート場行く?」「行く!」と話しながら帰りました。
後日、平日午前中に立ち寄った際のリンクの様子がこちら。夜とは印象が変わりますが、氷に映る木々の影も美しいです。
つるーんとなめらかな氷です。屋外リンクということで、気温や天候の影響も大きいようですが、街中の利便性のいいところに期間限定のスケートリンクができるというのは、とてもうれしい試みだなと思いました。『スマイルリンクさっぽろ』ができなければ、わたしがスケートデビューすることは一生なかったかもしれません。小さなリンクではありますが、とっかかりの場所としては必要十分、初心者に優しい足首の固定されるスケート靴で始められたことは、わたしにとってはとても有り難いことでした。